轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

アパートのさつじん

アパートの殺人

平林 初之輔

「新青年 第一一巻第九号」1930(昭和5)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,579 字 · 39 页

青空文庫

「誰か来たんだね?」

私は、ベッドのそばに棒のようにつったったままたずねました。もっとも、何でもないような、ごく冷静な態度を強いて装っていたつもりですが。

「いいえ」と彼女はバットを口からはなしてはじめて口をききました。「誰も来やしないことよ、どうして?」

これがその日彼女の口から出た最初の言葉だったのです。どうも変なんです。いつもはもっとやさしいんです。どうといってよく説明はできませんけれど、とにかくもっと柔らかな調子で、私をふわりと包んでくれるようなんです。それが今日は、はじめから、とげとげして、つっけんどんで、まるで私に食ってかかるようなんです。

「誰が来たって悪いというんじゃないよ」と私はしばらくたってから、ぽつりぽつり言いはじめました。「あんたのようなしょうばいをしておれば、しょっちゅうお客のあるのは当たり前なんだから」

私は何でもなしに言ったのだけれど、みさをは、私の言葉が癪にさわったのか、執拗にだまりこくって莨ばかりふかしていました。ちょっと見ると、まるで私の言葉なんか聞かないで、ぜんぜん別のことを考えていたらしいのです。よくそういうことが彼女にはこれまでにもありました。