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グッド・バイ
グッド・バイ
「朝日評論」1948(昭和23)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页
田島は、しかし、永井キヌ子に投じた資本が、惜しくてならぬ。こんな、割の合わぬ商売をした事が無い。何とかして、彼女を利用し活用し、モトをとらなければ、ウソだ。しかし、あの怪力、あの大食い、あの強慾。
あたたかになり、さまざまの花が咲きはじめたが、田島ひとりは、頗る憂鬱。あの大失敗の夜から、四、五日経ち、眼鏡も新調し、頬のはれも引いてから、彼は、とにかくキヌ子のアパートに電話をかけた。ひとつ、思想戦に訴えて見ようと考えたのである。
「もし、もし。田島ですがね、こないだは、酔っぱらいすぎて、あはははは。」
「女がひとりでいるとね、いろんな事があるわ。気にしてやしません。」
「いや、僕もあれからいろいろ深く考えましたがね、結局、ですね、僕が女たちと別れて、小さい家を買って、田舎から妻子を呼び寄せ、幸福な家庭をつくる、という事ですね、これは、道徳上、悪い事でしょうか。」
「あなたの言う事、何だか、わけがわからないけど、男のひとは誰でも、お金が、うんとたまると、そんなケチくさい事を考えるようになるらしいわ。」
「それが、だから、悪い事でしょうか。」
「けっこうな事じゃないの。