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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

行進 (四)

」

「フクスイ? バカ野郎、ハイスイ(背水)の陣だよ。」

「あら、そう?」

けろりとしている。田島は、いよいよ、にがにがしくなるばかり。しかし、美しい。りんとして、この世のものとも思えぬ気品がある。

トンカツ。鶏のコロッケ。マグロの刺身。イカの刺身。支那そば。ウナギ。よせなべ。牛の串焼。にぎりずしの盛合せ。海老サラダ。イチゴミルク。

その上、キントンを所望とは。まさか女は誰でも、こんなに食うまい。いや、それとも?

行進 (四)

キヌ子のアパートは、世田谷方面にあって、朝はれいの、かつぎの商売に出るので、午後二時以後なら、たいていひまだという。田島は、そこへ、一週間にいちどくらい、みなの都合のいいような日に、電話をかけて連絡をして、そうしてどこかで落ち合せ、二人そろって別離の相手の女のところへ向って行進することをキヌ子と約す。

そうして、数日後、二人の行進は、日本橋のあるデパート内の美容室に向って開始せられる事になる。

おしゃれな田島は、一昨年の冬、ふらりとこの美容室に立ち寄って、パーマネントをしてもらった事がある。そこの「先生」は、青木さんといって三十歳前後の、いわゆる戦争未亡人である。