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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

怪力 (四)

すぐにまた、ぴしゃりと押入れをしめて、キヌ子は、田島から少し離れて居汚く坐り、

「おしゃれなんか、一週間にいちどくらいでたくさん。べつに男に好かれようとも思わないし、ふだん着は、これくらいで、ちょうどいいのよ。」

「でも、そのモンペは、ひどすぎるんじゃないか? 非衛生的だ。」

「なぜ?」

「くさい。」

「上品ぶったって、ダメよ。あなただって、いつも酒くさいじゃないの。いやな、におい。」

「くさい仲、というものさね。」

酔うにつれて、荒涼たる部屋の有様も、またキヌ子の乞食の如き姿も、あまり気にならなくなり、ひとつこれは、当初のあのプランを実行して見ようかという悪心がむらむら起る。

「ケンカするほど深い仲、ってね。」

とはまた、下手な口説きよう。しかし、男は、こんな場合、たとい大人物、大学者と言われているほどのひとでも、かくの如きアホーらしい口説き方をして、しかも案外に成功しているものである。

怪力 (四)

「ピアノが聞えるね。」

彼は、いよいよキザになる。眼を細めて、遠くのラジオに耳を傾ける。

「あなたにも音楽がわかるの? 音痴みたいな顔をしているけど。」

「ばか、僕の音楽通を知らんな、君は。