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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

怪力 (二)

「なんだ、あなたか。なぜ、来たの?」

そのまた、キヌ子の服装たるや、数年前に見た時の、あの乞食姿、ドロドロによごれたモンペをはき、まったく、男か女か、わからないような感じ。

部屋の壁には、無尽会社の宣伝ポスター、たった一枚、他にはどこを見ても装飾らしいものがない。カーテンさえ無い。これが、二十五、六の娘の部屋か。小さい電球が一つ暗くともって、ただ荒涼。

怪力 (二)

「あそびに来たのだけどね、」と田島は、むしろ恐怖におそわれ、キヌ子同様の鴉声になり、「でも、また出直して来てもいいんだよ。」

「何か、こんたんがあるんだわ。むだには歩かないひとなんだから。」

「いや、きょうは、本当に、……」

「もっと、さっぱりなさいよ。あなた、少しニヤケ過ぎてよ。」

それにしても、ひどい部屋だ。

ここで、あのウイスキイを飲まなければならぬのか。ああ、もっと安いウイスキイを買って来るべきであった。

「ニヤケているんじゃない。キレイというものなんだ。君は、きょうはまた、きたな過ぎるじゃないか。」

にがり切って言った。

「きょうはね、ちょっと重いものを背負ったから、少し疲れて、いままで昼寝をしていたの。