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グッド・バイ

グッド・バイ

太宰 治

「朝日評論」1948(昭和23)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,818 字 · 30 页

青空文庫

怪力 (一)

」

脅迫にちかい。

田島は、ため息をつくばかり。

怪力 (一)

しかし、田島だって、もともとただものでは無いのである。闇商売の手伝いをして、一挙に数十万は楽にもうけるという、いわば目から鼻に抜けるほどの才物であった。

キヌ子にさんざんムダ使いされて、黙って海容の美徳を示しているなんて、とてもそんな事の出来る性格ではなかった。何か、それ相当のお返しをいただかなければ、どうしたって、気がすまない。

あんちきしょう! 生意気だ。ものにしてやれ。

別離の行進は、それから後の事だ。まず、あいつを完全に征服し、あいつを遠慮深くて従順で質素で小食の女に変化させ、しかるのちにまた行進を続行する。いまのままだと、とにかく金がかかって、行進の続行が不可能だ。

勝負の秘訣。敵をして近づかしむべからず、敵に近づくべし。

彼は、電話の番号帳により、キヌ子のアパートの所番地を調べ、ウイスキイ一本とピイナツを二袋だけ買い求め、腹がへったらキヌ子に何かおごらせてやろうという下心、そうしてウイスキイをがぶがぶ飲んで、酔いつぶれた振りをして寝てしまえば、あとは、こっちのものだ。だいいち、ひどく安上りである。