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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

それがまるで不可能な事柄でない証拠には、造園術と建築術とが、現にある程度まで自然そのものを駆使し、変改し、美化しつつあるではありませんか。それをもう一層芸術的に、もう一層大がかりに、実行することは出来ないのでありましょうか。人見廣介は斯く疑うのでありました。

随って彼は、先に挙げた様な数々のユートピヤ物語よりは、それらの架空的な文字の遊戯よりは、もっと実際的な、その内のあるものはある程度まで彼と同じ理想を実現したかに見える、古来の帝王達の――主として暴君達の――華々しい業蹟に、幾層倍も惹きつけられるのでありました。例えばエジプトのピラミット、スフィンクス、ギリシャ、ローマの城郭的な或は宗教的な大都市、支那では万里の長城、阿房宮、日本では飛鳥朝以来の仏教的大建築物、金閣寺銀閣寺、単にそれらの建設物ではなくて、それを創造した英雄達のユートピヤ的な心事を想像する時、人見廣介の胸は躍るのでありました。

「若し我に巨万の富を与えるならば」

これはあるユートピヤ作者の使用した著書の表題でありますが、人見廣介も又、常に同じ歎声を洩すのでした。

「若し俺が使い切れぬ程の大金を手に入れることが出来たらばなあ。