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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

十九

十九

そして又、二人は暫くの間、太古の森の下蔭を騎行したのですが、森の深さは行くに従って極まる所を知らず、どう行けばここを出ることが出来るのか、再び最初の入口に帰るとしてもその道筋も分らぬ感じで、そうして無心の驢馬の歩むままに任せて居ることが、少なからず不安にさえ思われ始めるのでありました。

ところが、この島の風景の不思議さは、行くと見えて帰り、昇ると見えて下り、地底が直ちに山頂であったり、広野が気のつかぬ間に細道に変っていたり、種々様々の魔法の様な設計が施されてあることで、この場合も、森が最も深くなり、旅人の心に云い知れぬ不安がきざし始める頃には、それが却って、森もやがて尽きることを示しているのでありました。

今までは適度の間隔を保っていた大樹共の幹が、気のつかぬ程に、徐々にせばまって、いつの間にか、それが幾層の壁を為して、隙間もなく密集している所に出ました。そこには最早や緑葉のアーチなどはなくて、生い茂るに任せた枝葉が、地上までも垂れ下り、闇は一層濃かになって、殆ど咫尺を弁じ難いのです。

「さあ、驢馬を捨てるのだ。そして私のあとについておいで」