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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
若しや後悔なさる様なことはありますまいか」
この北見の異様な忠告を聞くと、廣介は何かしらゾッとしないではいられませんでした。でも、それが何であるか、分り切ったことを胴忘れした様で、不思議と思い出せないのです。
「君は一体何を……」
廣介は云いさして、ふと口をつぐみました。ぼんやりと、ある事が分りかけて来たのです。彼の顔は青ざめ、呼吸はせわしくなり、脇の下に冷いものが流れました。
「ソラね、少しずつお分りでしょう。私という男が何の為にこの島へやって来たかが」
「分らない、君のいうことは少しも分らない。狂気めいた話は止しにしてくれ給え」
そして廣介は又笑いました。併しそれはまるで幽霊の笑い声の様に力のないものでした。
「お分りにならなければ、お話しましょう」北見は少しずつ召使の節度を失って行く様に見えました。「『RAの話』という小説の幾つかの場面とこの島の景色とが、どこからどこまで、全く同じだというのです。それは丁度あなたが人見さんに生写しである様に、生写しなのです。若しあなたが人見さんの小説も読まず、話も聞いていらっしゃらぬとしたら、この不思議な一致はどうして起ったのでしょう。