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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页
さえなって来るのを、どうすることも出来ませんでした。
汽車は、併し、彼の感懐などには関係なく、駅から駅へと走り続け、やがて、夜に入って目的地のT市へと到着しました。前の人見廣介は、駅を出ると、その足で直ちに菰田家の菩提寺へと、急ぐのでした。幸い寺は市外の野中に建っていましたので、もう九時過ぎという、その時分には人通りもなく、寺の人達にさえ気をつけていれば、仕事を悟られる心配はありません。それに、附近には昔ながらのあけっ放しな百姓家が点在していて、そこの納屋から鍬を盗み出す便宜もあるのです。
あぜ道に沿った、まばらな生垣をもぐり越すと、そこがもう問題の墓場でした。闇夜ではありましたが、その代りに星が冴えているのと、前に来て見当をつけて置いたのとで菰田源三郎の新墓を見つけ出すのは、何の造作もありませんでした。彼はそこから石塔の中を本堂に近づいて、とざされた雨戸の隙から中を窺って見ましたが、ひっそりとして音もなく、辺鄙な場所の上に、朝の早い寺の人達は、もう寐て了った様子でした。
これなら大丈夫と見定めた上、彼は元のあぜ道にとって返し、附近の百姓家をあさり廻って、難なく一本の鍬を手に入れ、源三郎の墓地に戻って来た時分には、それが皆猫の様に跫音を盗み、闇の中で身を隠しての仕事だったものですから、非常に手間を取り、