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パノラマとうきだん

パノラマ島綺譚

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年10月~1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 页

青空文庫

そこに運ばれた樹木石材等は、非常な費用をかけたものではありましたが、さて、それを都に運んで売却するには、却って運賃倒れになるという様な点から、荒廃はしながらも、一木一石元の場所を換えた訳ではありません。随って、今でも、若し諸君が旅行の不便を忍んで、M県の南端を訪れ、荒海を乗り切って沖の島に上陸なさるならば、そこに、世にも不可思議なる人工風景の跡を見出すことが出来るに相違ありません。それは一見、非常に宏大な庭園に過ぎないのですが、ある人はそこから、何物か、途方もないある種の計画、若しくは芸術という様なものを感じないではいられぬでありましょう。それと同時に、その人は又、その辺一体に漲る、怨念というか、鬼気というか、兎も角も一種の戦慄に襲われないではいられぬでありましょう。

そこには実に、殆ど信ずべからざる、一場の物語があるのです。その一部は菰田家に接近する人々には公然の秘密となっている所の、そしてその肝要な他の部分は、たった二三人の人物にしか知られていない所の、世にも不思議な物語があるのです。若し諸君が、私の記述を信じて下さるならば、そして、この荒唐無稽とも見える物語を最後まで聞いて下さるならば、では、これからその秘密譚というのを始めることに致しましょうか。