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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
しかし黒雲を透して電光が閃くが如くに、光明は一度また二度隠見する。かくて最後に黒雲悉く晴れて、全天全地光明を以て輝く時が予想せらるるのである。すべて信仰進歩の順序はこれである。初より全光明を一時に望むべきものではない。まず懐疑の暗雲に閉じこめられて天地晦冥の間に時々光明の閃光に接し、その光明次第に増すと反比例して暗雲徐々として去り、遂に全光明に接するに至るのである。この順序を逐うて過たざるはヨブ記の実験記たる証拠である。そしてわが信仰の性質の漸次的進歩にある事を知るは、自己のために必要であり、また人に向って福音を説くに当って必要である。かの一夜にして人を光明に入れんとする如き伝道法は、この心理的事実を無視するものであると言わざるを得ない。
◯来世的光明の徐々として彼に臨みしは何に因るか。これ彼に降りたる禍、禍のための痛苦、痛苦の極の絶望に因るのである。「来世の希望は奈落の縁に咲く花なり」との語がある。大苦難、大絶望、あたかも死に瀕する如きを心に味う時、そこに咲く花は来世の希望である。わが愛する者の死に会してこれを独り彼世に送る。そして自身の心また死の如き寂寥悲愁に会して、奈落の淵に臨めるが如くである。