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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
いずれにせよ、旧約聖書においてこの個人的沈潜の深みを伝えし第一がヨブ記であることは、忘るべからざる点である。
◯ヨブ記を心霊の実験記と見る上において注意すべきは巻頭第一の語である。「ウズの地にヨブと名くる人あり」と記さる。ウズとは異邦の地である。実に旧約聖書はその歴史部を終えて教訓部に入るや、劈頭第一に異邦の地名を掲げ、異邦人ヨブの実験を語らんとするのである。これ真に今人の驚異に値することである。ウズの地とはいずこなるかについて諸説あるも、そのパレスチナの中になきことは明かである。そしてこれをアラビヤ沙漠の北部地方(全沙漠の三分の一または四分の一)の総称と見るを正しと思う。しかる時は、ヨブの住みし村または町はいずこぞという問題が次に起る。沙漠の最北部すなわちパレスチナに接近せる辺という学者もある。しかし沙漠の中央に近きデュマまたはショフ(Duma; Dschof)であるとの説を余は採るのである。羊七千駱駝三千という如き大群の家畜を養い得んには広き緑野を要するのである。そしてヨブの外にも彼に匹敵する、または彼に近き豪農が住んでいたことも当然推定せらるるが故に、かかる緑野の充分ある地はデュマの外にはないのである。