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ヨブきこうえん

ヨブ記講演

内村 鑑三

丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页

青空文庫

あるいは神は存在すれど必しも愛の父にあらざるならんなどという者もあった。しかし大多数の賛成を以て全会の輿論となったのは、彼が何か隠れたる罪を犯したためにこの大災禍が神より下ったのではあるまいかという老牧師の推測であった。ここにおいてか代表者数名を選びてヨブを見舞わしめ、その痛苦を慰むると共にその罪を懺悔せしめて、再び神の恩恵に浴せしめんとの議が全会の賛同を得た。かくて三人の委員が挙げられた。甲は老牧師エリパズ、乙は壮年有能の神学者ビルダデ、丙は少壮有為の実務家ゾパルであった。三人到り見れば、ヨブの実状は思いの外に惨憺たる有様であった。彼らは彼らの推測の誤らざりしを今更の如く感じた。一方ヨブはまた彼らの沈黙の中に彼らの心中の批難を知りて悲歎一時に激発した。しかるに彼らはヨブの哀哭の語に接してその言辞に因えられてその心裡を解する能わず、ますます彼らの推測の正当なりしを悟り、ここにヨブを責めてその私かなる罪を懺悔せしめ、以て彼を旧の恩恵の中に引き戻さんと計ったのである。そして年長と経験との故を以て老牧師エリパズまず口を開き、全教会の輿論を提唱して第一回の訶詰を与えたのである。