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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

それでも別に不満はなかった。自分で好きこのんで行ったのだから仕方がない。

留学中に、長岡先生が、欧洲の学会へ出席された帰りに、倫敦へ立ち寄られたことがあった。キングス・カレッジも訪問されて、たしかアップルトン卿(当時はまだ卿ではなく、新進の電波学者であった)だったかの案内で、実験室を見て廻られた。地下室の私の部屋へこられた時、先生は途端に「なんだ、君、こんなところにいたのか。こんな馬鹿なところにいてどうするんだ。今の物理学は独逸だよ」と、例の大声でいわれた。もちろん日本語である。私はへどもどして「ええ、いや、ここをすませたら、独逸へ行こうと思っていたのですが、独逸はどこがいいでしょうか」と、下手な挨拶をした。そしたら「独逸ならどこだっていいよ。こんな古臭い実験なんかやってるところはないよ」と、また叱られた。アップルトン先生は、多分日本語というものは、非音楽的な言葉だと思われたにちがいない。

英国へ留学したなどということは、物理の方では、あまり自慢になる話ではない。それで、私は帰ってからも、あまり吹聴しないことにしている。随筆にも滅多に書かない。従って、如是閑先生も、私の英国留学は、多分御存知なかったことだろうと思う。