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「もくせい」ごうのなぞ

中谷宇吉郎集 第六巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第六巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「もく星」号の謎、温泉2、海底の散歩、吉右衛門と神鳴、国際雪氷委員会のことなど、古代東洋への郷愁、身辺雑記、長岡と寺田、八戒に遭った話、亡び行く国土、牧野伸顕伯の思い出、湯川秀樹さんのこと、露伴先生と神仙道、私のふるさと、私の履歴書、ケリイさんのこと、コロラド通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 页

青空文庫

亡び行く国土

一 洪水か電力危機か

一 洪水か電力危機か

昭和二十六年の秋は、電力の危機が全国的に叫ばれ、その中でも関西地方の電力危機は、文字通りの危機であったらしい。大阪附近の工場がとくにひどくて、電力不足のために工場が休む、その生産低下による損害のために、中小企業家は倒産に瀕したと騒がれていた。

その理由は昨年の夏から秋にかけて台風がこなかったために、水が不足になり、そのために生じた電力危機であるといわれている。日本も戦争の末頃から、まことに哀れな国になったものである。台風が来れば大洪水が全国的に起きて、洪水だけでも日本は滅びるというような大騒ぎになる。たまたま昭和二十六年のように、台風がこない年には、今度は電力の危機がやって来る。こうなると台風が来ていいのか、来て悪いのか、全く戸惑いする状態になってしまった。

しかし日本の電力危機は、何も今日に始まった話ではない。もう二、三年前から、少しでも日本の電力事情について知識を持っている人たちは皆、十分に承知していたことである。そういう人たちは、たびたび警告を発してきていたはずであるが、その人たちの言葉は最近まで全く一笑に付せられてきた。