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こじきがくせい

乞食学生

太宰 治

「若草」1940(昭和15)年7~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,682 字 · 68 页

青空文庫

「代議士なんてのは、知らないね。金持なのかい?」

「まあ、そうだ。」少年は、ひどく落ちついた口調である。「僕の郷土の先輩なんだ。郷土の先輩なんて、可笑しなものさ。同じお国訛があるだけさ。僕は、その人からお金をもらって、いや、ただもらっていたわけじゃ無いんだ。僕は、教えていたんだ。」

「教えながら教わっていたのかね。」私は、早くこの話を、やめてもらいたかった。少しも興味が無い。

「女学校三年の娘がひとりいるんだ。団子みたいだ。なっちゃいない。」

「ほのかな恋愛かね。」私は、いい加減な事ばかり言っていた。

「ばか言っちゃいけない。」少年は、むきになった。「僕には、プライドがあるんだ。このごろ、だんだんそいつが、僕を小使みたいに扱って来たんだよ。奥さんも、いけないんだがね。とうとう、きのう我慢出来なくなっちゃって、――」

「僕は、つまらないんだよ、そういう話は。世の中の概念でしか無い。歩けば疲れる、という話と同じ事だ。」私は、この少年と共に今まで時を費したのを後悔していた。

「君は、お坊ちゃん育ちだな。人から金をもらう、つらさを知らないんだ。」少年は、負けていなかった。