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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
この家を作って、二年経って、太平洋戦争になった。石炭の配給が急に窮屈になって、一家一冬三トンということにきめられた。方々の家では大分困ったようであるが、私の家では、それがちょうど適量だったもので、そのまま平気で暮していた。今から思えば、一冬三トンでは越せないなどと云っていた時代のことは、まるで夢のような話である。
この防寒戸は、その上思わぬことに、たいへん役に立った。それは防空用としてである。ヒステリー患者のような防空演習の御連中には、どこの家も大いに手を焼いたものである。しかしこの家には遮光の心配はほとんどなかった。「私の家では年中毎晩防空演習をやっていますから」と云って、平気で済ましていた。
ところが思わぬ方面から、思いがけぬ非難が出た。それは防寒戸など入れては、色さまざまなカーテンを洩れる光の色の美しさを味わえないではないかという非難である。科学者として、住居の問題を科学的に解決されたのは面白いが、住宅などというものは、審美的な観点からも見る必要があるというのである。冗談でなく、或る建築雑誌に本統にそういう記事が載ったのには驚いた。考えてみれば、本州や九州では、昔から雨戸を使っていたので、従来の日本人の生活には、そういう審美的な住宅観はなかったのである。