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ふたつのじょぶん

二つの

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页

青空文庫

「浜の竹崎の主婦来る。夏は今日は松露掘に行きたる由」という程度であった。起居はまず普通と見てよかったらしい。

先生の肺尖加答児も、とり立てて病気というほどでもなかったらしく、須崎と高知との間を何回も往き来して、気ままな保養をするという程度であった。両人とも床に就ききりというのならばまだ諦めもつくが、この程度の症状であったのに、「肺病」という文字だけのために、引き離されて暮さねばならなかったのであった。十一月二十六日、須崎を立って船で高知へ帰って来られる途上、種崎の方に心を惹かれる先生の姿が、日記の中に残っている。「船浦戸に入りて雑喉場の前を過る時種崎の方の岸に見とるらしき女夏に似たり。」

先生が高知へ帰られると、奥さんも種崎から時々出て来られたようである。十一月九日「夏来る 鰯を持来る。早く帰り去りぬ。」十一月二十九日「夏来る。正木さんの写真持ち来る。亡き人のはいづれ哀なり。夕方帰る。」大抵は泊らずにすぐ辞去されたようである。もっとも正月には、流石に「夏浜より来りて一泊」し、また貞子の初節句の時には、珍しく二泊して「雛の衣桁にかくべき衣縫ふ」というようなはかない喜びの日もあった。