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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

現在は小説書きという特殊な職業をやっているものの、根が労働者であるせいか頑固な身体つきで、それがひどくシンが疲れているとみえて、顳あたりには白髪がめだっていた。

「昨年は繭値が出たンで、一寸よかったろう」

彼は努めて楽な調子で、背後をふりかえってそんなことを話しかけた。すると店先で団子を焼いている田舎女房風の鷲尾の妹は、憤ったような返辞をするのだった。

「なンのああた、あれ位ァ鼻糞にもなろうかいた」

「そうかな……」

「はァいああた、戦争でも無からにゃ景気ァ出んと――」

ヘエ! と思って鷲尾は妹の方を見たが、彼女は平気な青黒く焼けた顔をうつむけて、さッさと団子をおこしているのだった。

「戦争は、どことやるンだね?」

「……ちゅう話ですたい」

何の遅疑もなく、彼女はこのつぎの部落に「軍馬買入所」が出来たこと等を話す。それは鷲尾が東京で知ってるそれよりも、もっと単純で明瞭にあらわれているのだった。

吝ン坊で、不妊症のこの田舎女房は、青く鳥肌だった顔をしょッちゅう戸外へむけていて、馬を挽っぱった頬被りや、自転車に乗った百姓達を見ると、顔色とまるで反対な声を出して――一寸、烙ってゆきなはりまッせんか――とか、――寒うござりますな、帰りにゃお寄んなはりまッせ――とか叫びかけるのだが、相手は頬被り頭を一寸うごかすきりで、さッさ