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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
三四日前から風邪をひいていた子供に、売薬をアテがって、出発の日までにはいつものようにケロリト癒ると思っていたのが、三日めごろから熱が急にたかくなって、手足から首へかけて紅い斑点がいっぱいにふき出してきた。「真正」だと判断した町の医者に、避病舎に入院を命ぜられると、女房はまるで間の悪さの全部が子供のせいででもあるように口汚なく罵しるのだった。――
「バカヤロが、とんでもない病気をツカまえてきやがって……」
龍田山麓にある、廃屋のような避病舎へ、蒲団やバケツなどリヤカーにつんで、鷲尾が附添っていった。藁のハミ出した畳、泥壁のくずれ落ちたとこから笹の葉がのぞいている汚ない室に倅をねかして、鷲尾は毎日、家の者がハコんでくれる弁当と新聞だけ読んでいると、ちょうど留置場に入ってるときのような気持になるのだった。
子供はしだいに痩せ細って、便器にかかえていても、その手ごたえでもわかったが、十日めごろから、紅い斑点が少しずつとれていって、しなびた皮膚が粉のように一めんに剥げ始めてきた。
「お父ちゃン……」
ある夜中に、鷲尾は病人に喚び醒されてガバと起きあがった。全身汗をかいていて、怖ろしくマザマザした夢が、まだ眼先にチラついていた。