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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

親鸞 四季のうつりかわりの速いこと。年をとるとそれがことに早く感じられるものだ。この世は無常迅速というてある。その無常の感じは若くてもわかるが、迅速の感じは老年にならぬとわからぬらしい。もう一年たったかと思って恐ろしい気がする事があるよ。人生には老年にならぬとわからないさびしい気持ちがあるものだ。

唯円 世の中は若い私たちの考えているようなものではないのでしょうね。

親鸞 「若さ」のつくり出す間違いがたくさんあるね。それがだんだんと眼があかるくなって人生の真の姿が見えるようになるのだよ。しかし若い時には若い心で生きて行くより無いのだ。若さを振りかざして運命に向かうのだよ。純な青年時代を過ごさない人は深い老年期を持つ事もできないのだ。

唯円 私には人生はたのしい事や悲しい事のいっぱいある不思議な、幕の向こうの国のような気がいたします。

親鸞 そうだろうとも。

唯円 虫が鳴いていますね。(耳を傾ける)

親鸞 まるで降るようだね。

唯円 私はあの声を聞くといつも国の事が思われますの。私の家の裏の草むらでは秋になると虫がしきりに鳴きました。私のなくなった母は、よく私をおぶって裏口の畑に出ました。