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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
あなたのひざに片手を置いて涙を一滴落として見せる――それだけの事ですよ。
唯円 私はあの人を信じています。
僧二 もしあの女がほんとうにあなたに対して何かの興味を感じているとしたら。まあ、好奇心でしょうよ。若い坊様ということにな。あなたはごきりょうがよいからな。
唯円 そんな浮いた事ではないのです。私たちは苦しいほどまじめなのです。会うたびごとに泣くのです。二人いるとひとりでに涙が出るのです。
僧三 まじめとは驚きます。女郎買いすることがまじめとは。僧たるものが。いや、まったく今時の若いお弟子たちにはおどろきますよ。
唯円 私はあの人を遊女として取り扱っているのではないのです。ひとりの娘と思ってつきあっているのです。またあの人も私に買われるとは思っていないのです。
僧二 娘としたらよほど気まぐれな娘でしょうな。もろこしの書にも「晨に呉客を送り、夕べに越客を迎う」というてあります。考えてごらんなされませ。女にはあなたのほかに幾十のお客がある。それらの人のなかにはもっとお金のある、歴々の、立派な紳商や武家もありましょう。それらの人をさしおいて、特別に女があなたに心を寄せるというには、何かあなたにひきつけるところがなくてはならぬはずです。