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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

親鸞 あれは律義な、いい老人じゃ。

唯円 私は空おそろしいような気がいたします。私のために皆様の平和がみだれるのですもの。けれどなんということでしょう。私は永蓮様のお心をやすめることができないのです。永蓮様は涙ぐんで私をじっと見ていらっしゃいました。ひとつの大切なことを私が保証するのを待つために。けれど私は、和解とゆるしを求めるこころで、きつくその手を握り返しただけで、大切なことを言わずにしまいました。……私にはできないのです。

親鸞 それもみなで祈ってきめなくてはならないことだ。まあ心を静かにするがよい。(間。唯円をしみじみ見る)お前はやつれたな。

唯円 眠られぬ夜がつづきました。こころはいつも重荷を負うているようでございます。

親鸞 恋の重荷をな。だが、その重荷も仏さまにおまかせ申さねばならぬのじゃ。その恋の成るとならぬとは、私事ではきまらぬものじゃ。

唯円 この恋のかなわぬことがありましょうか。この私のまごころが。いえいえ、私はそのようなことは考えられませぬ。あめつちがくずれても二人の恋はかわるまいと、私たちは、いくたび、かたく誓ったことでしょう。

親鸞 幾千代かけてかわるまいとな。