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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

きのうも私にあの上品往生の発願文を読んでくれとおっしゃいましてね。

唯円 この上はせめてやすらかな御臨終をいのりたてまつるほかはあるまい。(考える)

勝信 唯円様。私はいつも気になっているのでございますがね。

唯円 善鸞様のことだろう。

勝信 えゝ。(涙ぐむ)御臨終には必ずお目におかかりあそばさなくては。呪いを解かずにこの世を去られては。

唯円 その事を私も心配しているのだよ。御不例の初めのころ、今度はどうも御回復のほどもおぼつかなく思われたので、弟子衆が相談してね。知応殿が善鸞殿をお召しあそばすようにお勧め申したのだがね。あの子憎しとて隔てているのでもないものを。由ない事を言い出して、私を苦しめてくれなとおっしゃって、御不興げに見受けたので、それからはだれもそのことを言い出すものがないのだよ。

勝信 でも今度ばかりはぜひ御面会あそばさなくては。もう二度と……私はたまりません。あとで善鸞様がどのようにお嘆きあそばすでしょう。

唯円 急ぎ御上洛あそばすよう稲田へ使いを立てておいた。もう御到着あそばすはずになっている。もう重なお弟子たちには皆通知してあるのだ。

勝信 早く申し上げなくては。