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しゅっけとそのでし
出家とその弟子
倉田 百三
「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页
善鸞 もったいない。わたしは多くの罪をかさねました。
親鸞 その罪は億劫の昔阿弥陀様が先に償うてくだされた……ゆるされているのじゃ、ゆるされているのじゃ。(声細くなりとぎれる。侍医眉をひそめる)わしはもうこの世を去る……(細けれどしっかりと)お前は仏様を信じるか。
善鸞 …………
親鸞 お慈悲を拒んでくれるな。信じると言ってくれ……わしの魂が天に返る日に安心をあたえてくれ……
善鸞 (魂の苦悶のためにまっさおになる)
親鸞 ただ受け取りさえすればよいのじゃ。
一座緊張する。勝信は顔青ざめ、目を火のごとくにして善鸞を見ている。
善鸞 (くちびるの筋が苦しげに痙攣する。何か言いかけてためらう。ついに絶望的に)わたしの浅ましさ……わかりません……きめられません。(前に伏す。勝信の顔ま白になる)
親鸞 おゝ。(目をつむる)
一座動揺する。
侍医 どなた様も、今が御臨終でございますぞ。
深い、内面の動揺その極に達する。されど森として声を立つるものなし。弟子衆枕もとに寄る。代わる代わる親鸞のくちびるをしめす。
親鸞 (かすかにくちびるを動かす。苦悶の表情顔に表わる。やがてその表情は次第に穏やかになり、ついにひとつの静かなる、恵まれたるもののみの持つ平和なる表情にかわる。