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なんぼく

南北

横光 利一

「人間」1921(大正10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,591 字 · 40 页

青空文庫

帯は後でゆっくり見せて貰うわ。」

「あかんぞ、あかんぞ!」と秋三は叫ぶと、奥庭から柄杓を持って走って来た。

「うちへ置いといてやってもええわして。」とお留は云った。

「あかん。」

「そんなこと云うてたら、仕方あらへんやないか。」

「あかん、あかん。」

「おかしい子やな。あんな死にかけてる者、何処へ行くところがあるぞ、可哀想に。」

「あんな腐った鰯みたいな奴と一緒にいたら、虫が湧くわ。」

「そんな無茶苦茶云うてんと。」

「あかんったらあかん。南のが引き取りゃそれでええんじゃ。」

「お前とこ虫が湧きゃ、わしとこでも虫が湧くわ。」とお霜は云った。

「勘が引受けよったんや。不足があるなら何処へでも抛り出しゃええ。俺とこはもう関係があるもんか。」

「勘が引受けたって、勘はお前、お前が無理に連れて来たで、置いたまでのことやないか。」

「どう云うたかよう勘にきいて来い。」

「勘は知らんと云うとったが。」

「知らん? よしッ、そんなら勘を呼んで来い。殴打しまくってやるぞ。」

「秋よ、もう黙っていやいせ!」とお留は叱った。

「いいや、勘の餓鬼、豪そうな顔して引受けさらしたくせに、そんなほざいたことをぬかしてるなら、こちにも考えがあるわ。