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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

口伝玄秘の術として、明らかになっていないが、医術と、祈祷とを基礎とした呪詛、調伏術の一種であった。だから、その修道者として、薬学の心得のあった玄白斎は、島津重豪が、薬草園を開き、蘭法医戸塚静海を、藩医員として迎え、ヨーンストンの「阿蘭陀本草和解」、「薬海鏡原」などが訳されるようになると、薬草に興味をもっていて、隠居をしてから五六年、初夏から秋へかけて、いつも山野へ分け入っていた。

行手の草が揺らいで、足音がした。玄白斎は、杖を止めて立止まった。仁十郎も、警戒した。現れたのは猟師で、鉄砲を引きずるように持ち、小脇に、重そうな獲物を抱えていた。猟師が二人を見て、ちらっと上げた眼は、赤くて、悲しそうだった。そして、小脇の獣には首が無かった。疵口には、血が赤黒く凝固し、毛も血で固まっていた。猟師は、一寸立止まって、二人に道を譲って、御叩頭をした。玄白斎は、その首のない獣と、猟師の眼とに、不審を感じて

「それは?」

と、聞いた。猟師は、伏目で、悲しそうに獣を眺めてから

「わしの犬でがすよ」

「犬が――何んとして、首が無いのか?」

猟師は、草叢へ鉄砲を下ろして、その側へ首の切取られた犬を置いた。