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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

七瀬の頬に触れた寛之助の額は、ただの熱でなく、熱かった。

長いようでもあったし、短いようでもあった。ほんの瞬間、疲れから、夢を見たような気もしたし、本当に、奇怪な事が起ったようにも思えたし――七瀬には、判断がつかなかった。ただ、鋭い眼だけは、頭の隅に、閃いていた。

侍女が、つつましく、襖を開けるのさえ、もどかしかった。顔が見えると、すぐ

「方庵を――」

侍女は、立って入ろうとした。

「方庵を、早く――」

侍女は、七瀬の声と、顔が、ただでないのを見て、襖を閉め残したまま、小走りに行った。

寛之助は、熱い額を、頬を、七瀬の肌へ押しつけて、獅噛みついていた。寝かせようと、下へ置こうとすると、咽喉の奥から叫んで、置かれまいとした。

「七瀬がおります。七瀬がおります」

背を軽く叩いて、顫える寛之助を、安心させようとしながら、七瀬は、眼の底、頭の隅に残っている今の幻像が、誰かに似ていると考えた。だが、似ているその誰かが思い出せなかった。

抱き上げていて、風邪をひかしてはならぬと思ったので、寛之助が獅噛みついているまま、寝床の中へうつ伏せになって、毛布でくるんだ。

(あの物の怪に、おそわれなさるのかしら)