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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

手招きした。山内が、大股に、ゆっくりと、草原を二人の方へ歩いて行った。

牧は、貴島と、斎木と三人で、夜の祈祷の準備のために、四辺を火で清浄にしてから、その跡へ、犬の血、月経の血、馬糞の類を撒いていた。

「味方でないとすれば、不敵な代物じゃ」

「此処へ来る迄には、見張を斬らなくてはならんが――」

と、残りの人々が話し合った時、山内が右手を挙げた。

「それっ」

人々は、刀を押えて走り出した。牧は、じろっと、それを見たままで、指を繰って、何か考えていた。

「先生」

斎木が、人々の走って行くのを見て

「先生」

「判っている」

冷やかに答えて、牧は、眼を閉じた。斎木と、貴島は、人々が、一列に立並んで、刀へ手をかけているのを見ながら、不安そうな眼をしていた。

山内が、微笑しながら、ただ一人、牧へ近づいて来て

「よい生犠が、来よりました。老人、若いの、御好み次第、生のよい生胆がとれる――牧殿」

牧は、眼を閉じて、突立ったまま、裾を、袖を、髪を、風に吹かれていた。

「牧殿」

「判っております。御貴殿、よろしく」

山内は、じいっと、牧を睨んで、黙って踵を返した。丁度、その時、真一列に並んでいた浪人達が、じりじり左右へ分れかけた。