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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

西郷は、そう云って、笑った。

韃靼冬へ集まっていた若い人々は、西郷が来ないので、雑草の深い庭へ出て、草の頭をむしってみたり、縁側へ寝転んで、美少年の噂をしたり、懐から、日本外史を出して読んだり、それから、七八人の人々は、見取図を書いて、何う襲撃したらいいかを話していた。

町から、登り道になって、だんだん淋しくなってくる韃靼冬には、二人の見張が出ていて、同志以外の者の来るのを見張っていた。その一人が

「誰か、走って来よる」

と、木の間の中で叫んだ。一人が

「俊斎だ」

と、じっと、凝視めていた。

「俊斎だ」

俊斎は、眉を歪めて、口を開いて、喘ぎながら、右手で袴を掴んで、左手で刀を押えて、走って来た。一人が、林の中から

「水」

と、叫んだ。俊斎は、ちらっと見たまま、走り抜けようとした。

「水」

それは、合言葉であった。俊斎は、答えないで、走り抜けてしまった。

「待て」

見張が、叫んで、走り出ると共に、俊斎が振向いて

「たわけっ」

と、睨みつけて怒鳴った。

「然し、合言葉を」

と、見張が、云ったとき、俊斎は、もう、七八間も、走ってしまっていた。

「自ら、盟約を破って――有村は、いつもあれだ」