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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

五

……夕食をとったあと、ひどい疲労と睡気におそわれたが信三の帰りを待ちたかったのでまた研究所のほうへいった。しかし仕事をする気力はもうなく、漫然とカード箱をいじったり椅子にかけてもの思いにふけったりした、そして十二時を過ぎたとき、とうとう諦らめて寝に帰った。

その翌日も信三は帰らなかった、兄の省吾は熱が高くなり、はげしい関節痛をともないだしたので医者を呼んだ、医者は、

「まだはっきりしないがことによるとチフスかもしれないから」

そう云って手当の指図をし、すぐ検便の結果を知らせるからと帰っていった。

「なにか悪運のようなものが動きだしている」

昌子はそう思った、

「……しっかりしていないとなにかとり返しのつかないことが起こるかもしれない、気をひきしめて、しっかりしていなくては」

五

信三は激しい渇きで眼がさめた。手を伸ばして枕許の水差をとり、いきなりその口からごくごくと飲んだ。煙草をとったが、箱の中には一本もなかった、やむなく半身を起こし、灰皿の中から半分ほど喫いかけたのを捜し、火をつけて貪るようにふかした。

部屋の中は暗いが、もうよほど日は昇ったのであろう、雨戸のすき間から日光の条がさしこんでいる。