轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
「親父が金をくれてね」
と、信三はそのとき昌子に銀行通帳を見せた、
「なんにでも遣えと云うんだ、もちろんこれで充分だとは云えないが、新しく建てると少しは便利になるからね」
そして楽しそうにいろいろ建物の設計図を買い集めたりしていた。
「新しい研究室」昌子はぼんやりとそう呟やいた、夏草のたくましく伸びている空地には、さわやかな朝の日光がさんさんとあふれていた、叢の中にはもう月見草の花もみえる、
「……研究室が建ったら、あの月見草を庭いっぱいにふやしてみよう、そうして夕方はその花の中へ卓子を出して食事をしよう」
そう呟やきながら、彼女は酔うような気持で、新しい建物と月見草の群れ咲く花と、その花のなかで食事をする信三と自分の姿を想像するのだった。
「でも本当にそれが実現するかしら、こんどの旅行の中止が、そのまま自分たちの愛の中止になってしまうようなことはないだろうか」
そういう疑いが根づよく心をしめつけた。兄に頼まれたのは顕微鏡写真の撮影で、かくべつむずかしい仕事ではなかったが、気持がおちつかないためにつまらない失敗ばかりし、夕方までやって予定の半分もはかどらなかった。