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よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
「……あなたはご自分の病状をご存じなんですか」
「ある程度まで知っています」
医者の警戒心を解かなくてはいけなかった、彼は楽な姿勢になり煙草をとりだした、
「……煙草を喫わせてもらっていいですか」
「ではあちらへゆきましょう」
医者はそう云いながら椅子から立った、
「ちらかしていますがここよりおちつきますから」
看護婦になにか命じて、医者は診察室の隣りへ彼を導いた。そこは客間を兼ねた書斎で、二方の壁間を埋めるおびただしい蔵書があり、見ると専門の医学書のほかに文学史学の本が多く、陶器や茶に関するものも少なくなかった。……室の中央にある低い茶卓子をかこんだ椅子にかけると、間もなく看護婦の一人が紅茶を運んで来た。「患者が来たら待ってもらって」医者はそう云いやり、仕事机のひきだしから見なれない印の煙草をとり出して来てすすめた。
「もらい物で失礼ですがおつけください」
「ありがとう」
信三は軽くうなずいて自分のものに火をつけた、
「……静かないい部屋ですね」
「少し明るすぎるのでこっちの窓をふさごうかと思っています、父の建てたものなんですが、このままでは眼がちかちかしておちついて本も読めません」