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よねんかん

四年間

山本 周五郎

「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页

青空文庫

色の白い中だかのはっきりと大きくみひらいた眼と、少し厚めなしかし知的な線をもつ唇とが際だってみえる、こういう顔だちは藍とか紺とか紫系統の色のよく似合うものだ。信三はちょっと眼を細めた、昌子は彼が自分の姿を美しいと見てくれたことを感じ、羞かしさと誇らしさとに思わず微笑した。

「用が早くすんだものですから」昌子は信三により添うように歩きだした。

「……来てみたら一時半なので困ってしまいました、どこかで休もうかと思ったんですけれど、喫茶店のようなものもないし……」

「すまないが」と、信三はぶっきらぼうに昌子をさえぎった、

「……今日は旅行にいけなくなったんだ、ちょっと用事ができたんだ、帰還して来た友達があるんでね、今夜その歓迎会をやるんだ」

昌子はびっくりしたように彼を見あげた。信三は立ちどまったが、放心したような眼であらぬ方を見ていた。

「君は茅ヶ崎へ帰ってくれたまえ」昌子のほうは見ようともしないでそう云った、

「……僕は明日になるかもしれない、でなければあさってになるか、いやたぶん明日は帰れると思うが」

「はい」昌子は従順にうなずいた、

「……では三時十分で帰ります、なにか御用はございませんでしょうか」