轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よねんかん
四年間
山本 周五郎
「新青年」博文館、1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 页
礼を述べて立ち上がった信三は、その医院を出て玄関さきの石段を下りたところで立ちどまった。そこは広い往来からちょっとはいった静かな横丁で、人通りのと絶えたかわいた道の上に、ぎらぎらと六月の日光が照り返していた。信三は深い呼吸をし、帽子をかぶった、――これで解決した。そんな言葉が頭にうかんだ、なにか急いでしなければならないことがあるように思い、またすべてが終わって、もうなにをするのもむだだという気もした。
「おかしいと思ってたんだ、いつも表に自動車が五六台もとまっているんだからな」そう云う声が聞こえた、
「……やっぱり闇料理屋だったのか、そうだろうな」信三は眼をあげた、話しごえはすぐ向こうにある板塀の中から聞こえるのだった。
「あんなお邸でもそんなことをしなけりゃやってゆけないんだ、たいへんな世の中になったもんだぜ」
そこまで聞いて信三はようやく歩きだした。
バスで山手線の駅までゆき、品川で電車を下りた。時計を見ると二時である、――まだ約束までに三十分あるな、そう思いながら改札口を出ると、つい右手にある支柱の蔭から昌子が出て来た。細かい藍の千筋の中に太い藤色の棒縞の入った秩父の単衣に、帯は白地に朝顔を染めた腹合せをしめていた。