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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

「ふしぎですなあ。やっぱりこの世に幽霊というものがあるんですかねえ」

隣組の、ある銀行の支店長は、帽子のあご紐をかけながら、顔をこわばらせた。

「この前は、うちの家内の神経のせいじゃろうと、あまり問題にもしないでいましたが、こうたびたび現われるようだと、あれは本当に幽霊かもしれんですなあ」

外出先から帰ってきた雪子の父親武平がさわぎの仲間に加わって、こんな感想をのべた。

「もっとふしぎなことは川北先生の姿が消えてしまったことなんです。あの松の木で完全に姿が見えなくなったんです。一体どういうわけでしょう」

目撃者の道夫は、川北先生のことを問題としてだした。

「どういうわけでしょうね。幽霊が消えるのはわかっているが、生きている人間まで消えてなくなるというのは、さっぱり訳がわからない」

「その川北先生は、幽霊を追いかけて、遠くまでいってしまったんじゃないですか。そのうち先生は、ふうふういいながら、ここへもどってこられるのではないですかな」

いろいろな説がでる。

「いや、川北先生は遠くへいくはずがないんです。先生の足跡は、松の木の下で消えているのです。遠くへいったものなら、先生の足跡がそっちへ続いていなければなりません」