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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月4日~9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 页

青空文庫

この坂を少し下って行くと、右側に木立が繁っていた。木立の下には名ばかりの茶店があった。茶店の下が崖で、不動尊の像か何かあった下の竹の筒から、細い滝が落ちていた。津の守の滝といった。その辺り一帯は、今も残る通りの凹地であって、底には池があった。周囲の崖には昼も暗い程大木が矗々と茂っていた。夏は赤く水の濁った池で子供が泳いだ。巡回の巡査が時々廻って来て子供を叱る。『お廻り来い、裸で来い、こっちで罰金とってやる』悪たれ口をついて、子供達は裸で逃げ出した所である。秋になると、崖ぶちの恐ろしく高い木に、藤豆のような大きな平たい莢の実が生った、簪玉位な真紅の美しい実のなる木もあった。クルミもあった。私達はよくそれを拾いに来たが、夕方近くなると恐ろしくなるような所だった。それに荒木町よりの崖のところには、誰かの家で幽閉した気狂の部屋があって、終日鳥のような声を出して怒鳴るのが、崖や木立に気味悪くこだました。余り英語を勉強して気狂になったという話だった。

この池の辺には芝居小屋の建ったこともあった。焼けたのか潰れたのか、色々に小屋が変った。時折は角力もかかった。