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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
広間に入って来た三津子は、事件当時に較べるとすっかり窶れ果て、別人のように見えた。それでも生れついた美貌は、彼女を一層凄艶に見せていた。一つには、三津子は今日は和服に着換えているせいもあったろう。それは三津子の兄が、差入れたものであった。
大寺警部は、三津子を容疑者として誰よりも重視しているので、警部は誰よりも張切って動いていた。
「検事さん。どうぞお始めになって下さい。私の訊問は検事さんの後でさせて貰います」
大寺警部は、三津子訊問の催促を長谷戸検事に対して試みた。
「じゃあ少しばかり僕がやって、後は君に引継ぐから、十分やりたまえ」
検事はそういってから、やおら三津子の方に顔を向けた。俯向いた三津子の項に、乱れ毛がふるえていた。
「土居さん。二三の問に応えて頂きましょう」検事はやさしくいった。「あなたが当夜、ここの主人の鶴彌氏に送られてこの部屋を出て行ったときのことですが、鶴彌氏はどの程度に酔払っていましたか」
三津子は口を開こうとはせずに、床の上をみつめていた。しかし検事は辛抱強く彼女の応答を待った。
「酔ってはいらっしゃらなかったようでございます」