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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
それから被害者の弟の亀之介ですが、当人は帰宅したといっています。その時刻は、多分午前二時頃だと思うと述べていますが、当時泥酔していて、家に辿りつくと、そのまま二階の寝室に入って今朝までぐっすり睡込んでしまったようです。当人はさっきちょっと起きて来ましたが、まだふらふらしていまして、もうすこし寝かせてくれといって、今も二階の寝室で睡っているはずです。もちろん逃げられません、監視を部屋の外につけてありますから」
それを聞くと検事は軽く肯いた。それから彼は遺骸の前の小卓子の上を指して、
「その卓子の上に並んでいる飲食物や器物は誰が搬んで来たのかね。それは分っている?」
「はい分って居ります。洋酒の壜以外は、家政婦の小林トメが持って来たものに相違ないといって居ります。それは午後九時、家政婦が地階の部屋へ引取る前に、用意をして銀の盆にのせて持って来たんだそうです」
検事は引続き軽く肯きながら、小卓子の上を見まもった。盛合わせ皿には、燻製の鮭、パン片に塗りつけたキャビア、鮒の串焼、黄いろい生雲丹、ラドッシュ。それから別にコップにセロリがさしてある。それからもう一つちょっと調和を破っているようなものが目についた。