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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

彼は五十万円を共謀者に渡した。それに替って、あの恐ろしき「地獄の使者」であるところの缶詰が、彼に手渡されたのである。彼は大安堵をして、告白書を焼却したその直後に殺されてしまったのだ。

彼の考えでは、その告白書の処置をつけた上で、全面的に弟亀之介を痛めつけるつもりでいたのだ。亀之介の方でも、とくにそのことを感付いていて、告白書が兄の手に渡るや否や、あとは大風が自分の方へ向って吹きまくるであろうこと、そして多分自分は放逐されるだろうと先の見透しをつけた。そしてそれなら一層のことにと、兄鶴彌を殺害する意志をかため、その計画に移ったのである。そしてあの告白書を返してやると同時に、その場で兄を地獄に追いやることを考えつき、これこそ一石二鳥であるわいとほくそ笑んだのであった。彼は御丁寧にも死者を後でピストルで撃ち、そのときに殺害したものと思わせ、犯人容疑者まで用意したのだった。

尚、毒瓦斯ケリヤムグインは、鶴彌を斃した後、通気孔や窓の隙間から自然に外へ出て行き、稀薄となっていった。そして約一時間半後、亀之介がクラブを脱出して帰邸し、庭から窓をあけたときには、毒瓦斯はもう致死濃度ではなかったのである。