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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
警部は弁明にどもりながら、ちらりと帆村へ険しい一瞥をなげつけた。
「そう。事件捜査に当る者は、一応現場附近に於けるあらゆる事物に深い目を向けてみるべきだと思うね。殊に、その事物が尋常でないときには、特に念入りに観察すべきだな」
「はあ。どぶ鼠が死んでいるということは、尋常ではありませんですかな。すると、犯人はそのどぶ鼠を狙い撃ったのですかな。そうなると、犯人は射撃の名手だということになりますね。……おやおや、このどぶ鼠は、どこにも弾丸をくらっていませんですよ」
警部は、紐を鼠の首へかけて結び、穴から引張り出して一瞥したが、早速鼠の狙撃説をくつがえした。尤も鼠の狙撃説は、彼自らがいい出したことであったが――。
「まあ、そうだろうね」
と検事は苦笑して、それから頤を帆村の方へ振った。
「そこに居る帆村君が、その鼠を欲しがっているようだから、氏に進呈したまえ」
「ははあ」
警部は、わざとらしく愕いて帆村の面上へ目を据えた。それから死んだ鼠を、うやうやしく帆村の方へ差出した。
「ありがとう。じゃあお預りします」
と、帆村はその真面目な顔で、警部の手から、鼠の身体を吊り下げている紐を受取った。