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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
それをあなたがちゃんと見ていた――という風な証言が要るんだ」
「ははァ……」
「或いは又、あの晩、この邸へ来て主人を訪ねた土居三津子という若い女の客が、主人に送られて玄関から出て行った時刻――それは多分正十一時頃らしいが、小林さんがそのすこし前から始まって午前零時半頃までのこの一時間半ばかりの間、決して主人のところへ行って彼を殺さなかったという証明が出来てもいいんです。これにもいろいろの場合があるが、例えばですね、その一時間半に亙って、小林さんは自分の部屋から一歩も外へ出なかったということを、あなたが証明出来るなら、小林さんは晴天白日の身の上になれるんです。どうですか芝山さん」
帆村のこの言葉は、芝山宇平を痛烈に突き刺したようであった。芝山は、いきなり腕を前に振ると、頭を両腕の中に抱えて俯伏した。そしてなかなか顔をあげなかった。
このとき一座の視線は、この芝山と帆村とに集っていた。
やや暫く経って、芝山は顔をあげた。真赤な顔をしていた。
「どうか、おトメさんに会わせて下さい」
彼は切ない声でいった。
「小林さんは重大なる容疑者になっているから、今君を会わせることは出来ないですよ」