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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

帆村の事務所(一)

向こうでも気がついたか、三津子は座席から前へ乗り出したが、そのときはもう兄や帆村が見えない角度になってしまっていた。帆村は土居の肩を叩いて、自分と一緒に事務所へ来るようにといった。

帆村の事務所(一)

事務所の扉を開くと、帆村を助手の八雲千鳥が出て来て迎えた。

「いらっしゃいまし」

と、土居の方へ挨拶をした。それから無言で帆村の方へ頭を下げた。

「何も用事はなかったんだね」

「はい。別にお知らせするほどの急ぎものはございませんでした。もう現場の方はお済みですか」

「今日の方はお仕舞となった。……で、君は僕が何処に居たか、知っているのかい」

帆村の眼が悪戯児のように光った。

「先生、そんなことぐらい、ちゃんと分っていますわ」

八雲千鳥は、遠慮がちに笑って、帆村の顔と客の顔を見た。

「じゃあ訊くが、何処だい」

「旗田さんのお邸でしょう」

「その通りだ。――でどうしてそれが分ったのかね、僕は何も君へノートを残して置かなかったのに……」

「ノートを残していらしったじゃございませんの」

八雲助手の声に、得意の響きがある。

「はてね」

「灰皿に真黒焦げになって紙の燃え糟がございました。