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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

帆村の事務所(二)

「確かな証拠というやつは、もう相当集っているのかい」

「うん。僕としてはいくつかのそれを持っている、動かない証拠をね」

「じゃ、それは今どんな形に積みあげられているのかね。どんな方向に向いているのか」

「まあ、それはいわないで置こう」

帆村は土居の方をじっと見た。

「その証拠なるものが語る謎の言葉を、僕はまだ殆んど聞き分けることが出来ていないんだ。口惜しいことだがねえ」

二人はしばらく沈黙に陥った。部屋の窓から、夕空が赤く焼けているのが見られた。

帆村の事務所(二)

やがて土居が口を開いた。

「ピストルに関する調べは、全く無駄に終ったわけだね、なにしろ死因がピストルの弾丸でないと分ったから……」

帆村は黙って土居の顔を見る。

「ねえ帆村君、そうだろう。すると、その取調べの途中に、重大なる容疑者として新しく登場した小林トメなんかは、容疑者から解放されたわけだろう」

「ピストルは、やっぱりこの事件に重大な役割をつとめていると思う。だからそれに関する取調べは無駄ではないと思うよ」

「なぜさ。意味がないものは消去して考えたがいいと思うがね」

「しかしねえ、君」

帆村は吸殻を灰皿の底にすりつける。