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じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页

青空文庫

木島刑事

耳をすますと、ハタハタ、ハタハタ、遠ざかって行く、曲者の足音がする。

折枝はその足音が消えるのを待って、いきなりうしろへ走り出した。滅茶滅茶に走った。迷路を出ることなど、もう考えなかった。ただじっとしていられないのだ。

グルグル、グルグル廻っている内に、パッと眼界が開けて、広い場所へ出た。だが、迷路の外ではない。その中心の広場なのだ。所謂奥の院という場所だ。

真中に一脚のベンチが据えてあった。そのベンチの足元に、白と赤とのダンダラの塊が転がっていた。血にまみれた諸口ちま子の死骸であった。

簡単な白い絹服の背中にニョッキリ短剣の柄丈けが生えていた。刄の方は全部ちま子の体内へ隠れているのだ。

絹服は、鮮かな血のりの縞模様に染まって、空を掴んだ両手と、もがいた両足とが、白っぽく根元まで現われていた。

ちま子は無論全く絶命していた。

木島刑事

いくら難解な迷路でも、歩き廻っている内には、いつか出口が見つかるものだ。大野雷蔵と人見折枝が、間もなく殺人迷路を抜け出して、園内の事件を一同に告げ知らせたことは申すまでもない。

浮世の外の楽園とは云え、殺人事件をそのままうっちゃって置く訳には行かぬ。