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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
黒い影
「ハハハ、……驚いたかい。冗談だよ。もういいんだ。お前を殺そうなんて思ってやしない」
譲次が、白い歯をむき出して笑った。
「だがね、この短剣のことや、俺が怪しいなんて、人に云うと承知しないぞ。無論俺はあの殺人事件に、これっぱかりも関係はない。併し、つまらない疑いを受けるのはいやだからね。分ったかい。少しでも変なことを口走ったら、承知しないよ。殺してしまうよ」
「エエ、いいわ。決して云やしないわ」
麗子は一層恐ろしくなって、やっぱり震えながら答えた。
それを聞くと、譲次は荒々しく彼女を引寄せ、赤インキでドロドロになった、丸い頬っぺたへ、唇を当てた。
すると彼の唇は、赤ん坊をたべた山猫の様に、物凄く血に染まってしまった。
黒い影
彼等は深夜の血みどろ遊戯にヘトヘトに疲れてしまったので、翌日眼をさましたのは、もうお昼過ぎであったから、麗子が、血に汚れた身体を洗い、お化粧をして人々の前に顔を出したのは夕方に近かった。
晩餐の席では、例によって木島刑事が、疑い深い目で、ジロジロと一同を眺めていたが、まだ何の手掛りも掴んでいない様子だった。
人々は、お互に疑問の目を向け合って、気拙い食事を済ませた。