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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
点を除くと、譲次が最も濃厚なる嫌疑者であることは、誰も疑わなかった。
検事は譲次を前に呼び寄せて、鋭い質問をあびせかけたが、彼は何事も知らぬ存ぜぬの一点張りでおし通した。
検事は更に治良右衛門、木下鮎子、大野雷蔵、餌差宗助などをも取調べたが、これという程の発見はなかった。
その朝、三重の殺人事件が起った時間には、治良右衛門は例によって観覧車の箱の中に、鮎子と雷蔵とは、建物の中の各自のベッドに、まだグーグー寝ていたことが明かになった。それぞれ証人があって、一点の疑を挟む余地もなかった。
脊むしの餌差宗助は、早起きの男で、その朝も五時頃から起き出で、園内を見廻っていたと申立てたが、園内といっても山あり川あり広い場所のこと故、犯罪の行われた時分、彼がどこで何をしていたかは、誰も目撃したものがなかった。つまり彼にはアリバイとなるべき証人がなかったのだ。
右の人達の外に、花火係りのKという男が検事の取調べを受けたことは注意すべきだ。
「君は今朝六時頃に花火を打上げていたということだが、そんなに早くから、何の為に花火なんぞを上げていたのだね」
検事が尋ねた。
「ヘエ、それが私の仕事なんで、毎日、朝の六時から夕方の六時まで、ひっきりなしに昼花火を打上げているのが、私の役目なんです」