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じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页

青空文庫

「エッ、そうでなければ?」

「弾丸です。非常な名射撃手があって、あの細い繩を的にして、弾丸を命中させ得たとすれば、丁度あんな切口が出来たかも知れません」

「どこから?」

治良右衛門がびっくりして尋ねた。

「迷路の中心からと云い度いのですが、それは誰が考えても不可能です。もっと近い所、例えば風船の繋留所の真下からでも発射したとすれば、そして誰にも気づかれぬ間に森の中へ逃込んだとすれば、満更出来ないことでもありますまい」

「併し、銃声が聞えましょう。炊事の婆さんは鉄砲の音については何も言わなかった様ですが」

「花火です。あの気違いめいた朝っぱらからの花火の音が銃声を消したと考えることは出来ないでしょうか。僕が今朝花火係のK君を呼出したのは、その点を検事に知らせて置きたかったからですよ」

「成程、成程、花火とはうまく考えましたね。あなたは恐ろしい人だ。併し、動機は? 譲次はなぜ折枝さんを殺さなければならなかったのです」

「折枝さんが双眼鏡を握っていたことを御記憶でしょう。あの人は風船の上から園内を眺めていたのです。そして偶然にも、迷路の中心の不思議な光景を目撃したのです。