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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
餌差宗助
折枝さんはこの二人に嫌疑のかかることを恐れたのです」
「併し、二郎は殺されてしまった」
二人は大提灯の心臓の不気味な赤黒い光の下で、思わず顔見合わせ黙り込んでしまった。
餌差宗助
「二郎少年は殺されてしまった。すると」
「すると、あの背の低い男が残る訳です」
そして、二人は又もや黙り込んでいた。
治良右衛門の視線の先には、青黒い静脈の網に包まれた醜悪な軽気球の様な胃袋が、ドッシリと落ついて、それから暗闇の胎内深く、うわばみの大腸小腸がとぐろを巻いてつらなっていた。
我が設計ながら、人体解剖図のいやらしさ、むごたらしさ、果敢なさが、百層倍に拡大されて、その暗闇一杯に拡がっているのを見ると、ひとりでに心臓の鼓動が早まって来る様な気がした。
これらの巨大なる臓器どもが、生命をふき込まれて、俄にドキンドキンと、或はウネウネと、脈うち蠢き始めたら、どんなにか恐ろしいことだろう。と思う心がそのまま現実となって、オヤ胃袋が動き始めた。夢かしら。イヤ夢じゃない。動いている。この大鯨は現に生きて呼吸しているのだ。たべたものを消化しているのだ。張りボテの大胃袋がモヤモヤと動き出したではないか。